溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「これ……処分されるんですか?」
「捨てなくても、こうしたらインテリアっぽくならないかな」
社長は丸太を立て直し、書斎の一角に置いた。インテリアというか、書斎に馴染んではいるけれど……。
椎茸の世話がなくなったら、毎日社長室を訪れる理由がなくなってしまった。
いくら丸太がここに置かれていても、私が来れるのはあくまでも広報の仕事に関わるときだけ。
「時々は、ここに来てもらえませんか?」
書斎を出た社長を追って、応接のソファへ戻る。彼はコーヒーを淹れ、片手にチョコレートの箱を持って振り返った。
「理由なく出入りするような場所ではないので、難しいと思いますが……」
あぁ、またなんて可愛げのない。
来てもいいんですか?って、嬉しそうに言えない自分が悔しい。
箱から出したビスケットつきのチョコレートを1つ取って、社長が私の前に立った。
「白埜さん」
「はい……ん?!」
返事で開いた口に、押しこまれたそれを噛む。
チョコレートが舌先に触れて溶け、バターの風味がほのかに香ってきた。
「俺に会いに来てよ」
咥えたままだったそれが、人差し指で押しこまれて、もごもごと返事が儘ならない。
社長は、指先についた甘い甘いチョコレートを舐めて微笑んだ。