溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


 ここのところ立て込んでいた業務が手を離れたおかげで、18時には退勤できた。
 広報のフロアからエレベーターで一気に降り、社員証をかざすとゲートが開く。警備員に見送られながら、ビルの顔ともいえる地上階の自動ドアから出た。


「お疲れさまです、千夏さん」

 外に出ると、目の前の黒いセダンから桃園さんが出てきた。
 まさかの出来事に、どう対応するべきか焦る。


「……こんばんは。今日はいかがされましたか?」

「ちょうどこのビルに入っている企業に用がありましてね」

「そうでしたか。また弊社にもいらしてください」

「もちろんです。葛城社長が取引してくだされば、必然的にそうなるでしょうから」


 とことん意地悪な人だ。社長だって色々考えた末に出した結論なのに。
 自分の思い通りにしようとするのが、桃園さんのやり方なんだろう。



< 188 / 251 >

この作品をシェア

pagetop