溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
ここのところ立て込んでいた業務が手を離れたおかげで、18時には退勤できた。
広報のフロアからエレベーターで一気に降り、社員証をかざすとゲートが開く。警備員に見送られながら、ビルの顔ともいえる地上階の自動ドアから出た。
「お疲れさまです、千夏さん」
外に出ると、目の前の黒いセダンから桃園さんが出てきた。
まさかの出来事に、どう対応するべきか焦る。
「……こんばんは。今日はいかがされましたか?」
「ちょうどこのビルに入っている企業に用がありましてね」
「そうでしたか。また弊社にもいらしてください」
「もちろんです。葛城社長が取引してくだされば、必然的にそうなるでしょうから」
とことん意地悪な人だ。社長だって色々考えた末に出した結論なのに。
自分の思い通りにしようとするのが、桃園さんのやり方なんだろう。