溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
社長に手招かれ、取材の準備が進む間デスクへ近づくと、好きな香りが強く感じて、仕事中なのに気持ちを噛み締めた。
「……いかがされましたか?」
「このネクタイと靴、合うと思うんだけど、千夏ちゃんはどう思う?このあと、客先に出かけるんだけど」
想いを通わせた夜を越えたら、以前のように名前で呼ばれるようになった。先輩はどうしてまた元通りになったのかとしつこく聞いてくるけれど、何があったかなんて言えない。
だって、これは秘密の恋だから。
「悪くないと思いますよ」
「じゃあこれでいくか」
「よろしくお願いします」
「それと、顔赤いよ?」
しれっと言われて、余計に赤く染まったのが分かる。
言わなくてもいいと視線をキツく投げると、憎たらしいほど綺麗な笑みが返ってきた。
「今夜、話したいことがあるから、ここにきて」
小声で告げた彼を遠巻きに見つめる私は、きっと誰よりも幸せな顔をしているはずだ。