溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~




「千夏ちゃん、ごめん。もうちょっとかかるから、上で待ってて」


 15分ほど経った頃、彼は傍らに置いていたバッグから鍵を出し、デスクに置いた。



 ワガママを言ってもいいですか?

 忙しいって解っていても、やっぱり構ってほしいから。



「今日は帰ります」

「どうして?」

「社長、お忙しそうなので」

「そうだけど、あと少しだから」

「もう待てないんです」

「20分もすれば終わるって」



 社長の必死さに、笑いが堪えられなくなってしまった。

 一生懸命説得してくれるのが嬉しくて、でもなんだか可笑しくて……。いつも飄々としている彼が、こんな一面を持ってるなんて思わなかった。

 俯いて声を殺していると、突然彼が立ち上がった。



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