溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
1歩1歩踏み込まれるたびに後退り、窓に背を付けて見上げたら、刹那を置かずにくちびるが重ねられた。
「俺は最初からずっと待ってるのに、千夏は気づかないんだね」
夜景が映りこんだ彼の瞳は輝きを散りばめる。
前触れなく呼び捨てられて、不意を突かれた鼓動で胸が焦がれていくよう。
仕事も恋も、真正面から逃げずに立ち向かう社長が好き。
彼の時間にどれくらい彩りを添えられているか……あまり自信はない。
「結婚する?俺と」
「…………きっと、いつかは」
前にも言われた言葉に、照れながらも私らしい素っ気ない答えを返すと、彼はもう1つキスをくれた。
この恋に堕ちたのは運命だって思えるほどに、刻まれる時が愛しい。
素敵な毎日を過ごす彼の隣で笑っていられるなら、これほど幸せなことはないだろう。
神様。
どうかどうか、罪深き彼に制裁を――。
私の片想いを弄ぶように、いつの間にか夢中にさせて。
いたずらに心を暴いては、少しも気づかないふりをしてた。
いつから私の恋を手に入れていたのか……。
「今日からは、バージンロードの向こうで待ってるから」
幸せに満ちた笑顔で頷いて答えると、彼は穏やかに目を細め、甘いキスで誓いを立てた。