溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


「前に社長が好まれていたもののほうが、ずっとタチが悪いですよ」

「……会議資料の部数を間違えたくせに」

「なんでそれを」

「俺も最初だけ出席したんだよ。予定外だったけど」


 解いたネクタイが彼の背後のデスクチェアに放られ、Yシャツのボタンが2つだけ外された。


「ここのところ、仕事に身が入ってないって聞いたけど、どうした?」

「……変わったことはありません。ケアレスミスです」

「そういう時は、俺のせいだって言えよ。ぼーっと考えちゃって仕事が手に付かないとかさ」


 言い当てられて、口を噤む。彼は冗談交じりで言うけれど、相変わらず素直になれない。



「罰として、ここからは千夏がやって」


 強引に手が導かれ、はだけた彼の胸元に視線を向ける。
 いつもはカジュアルな私服で仕事をしているはずなのに、今日に限ってスーツ姿だ。つまり、何割も増した彼の色気が、全身から溢れるように伝わってきて――。


< 235 / 251 >

この作品をシェア

pagetop