溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
よりによって、桃園社長とつき合い始めるとは思わなかった。
これは完全に誤算。
それで、横取りされた感がものすごい。
正直言って、耳を疑った。なんであの人を選んだのかって聞きたかったくらい。
相手が悪すぎるっていうのは、俺の事情でしかないから、彼女には言えないけれど……。
ああいう、ギラッとした大人の男がタイプだとしたら、俺もそっちに寄せていく必要があるわけだ。
と、なると。
カジュアルが売りの社風に馴染む服装も、スーツを着こなしてキリッとさせたほうがいい?
……でも、スーツはたまにならいいけど、毎日は勘弁。肩が凝って仕方ない。
口が曲がりそうな気障なセリフを言ってみたり、超がつくほど紳士的に、かつゴージャスに振舞うべき?
……いやいや、俺じゃないよなそれって。
「社長、始めますのでお願いします」
遮るものの無い景色。都内の街並みを眺めながら思案していた俺は、ハイバックのデスクチェアをくるりと回転させて再び社長室内を見渡した。