溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


 俺に浮いた話がなかったのは、彼女が好きだから。
 ここのところ、雨賀碧が俺に付いて回るようになったけど、つき合ってる事実はない。

 キスは、されたけど。あれはなんていうか……大人の悪戯ってことなのかな。
 

 今までだって、女性から食事やデートに誘われなかったわけじゃない。
 ただ、その辺はキッチリしてるだけ。誰彼構わず、寄ってきた女の子を抱いてたら、すぐさまこの座を退く必要に迫られるだろう。

 ブルーメゾンは、俺が大切に大切にしてきた宝物。
 ここで働くみんなも、関わってくれる他社も、関連企業も、何もかも。血を分けた兄弟みたいなものだ。


 じゃあ、どうして冗談でプロポーズなんてするのかって?

 いつもそうしてるわけじゃない。
 彼女がいなかったら、そんなことは言わない。

 少しでも、俺に興味を持ってほしかっただけ。
 呆れられてもいい。最低って思われても。

 そこから挽回するのは大変だけど、マイナス査定され続けるよりもいい。

 そう思っていたからであって、失恋する予定はなかった。



 取材を受けている間、時折カメラから視線を外して彼女を見る。
 目が合っても、しれっとされるのは日常茶飯事だ。


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