溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「贈ったらマズかったかな?」

「いえ、決してそんなことはないんです。おかげで社長と変な噂を立てられずに済みました」

「でも、葛城社長はそう思ってないんじゃないの?」

「どういう意味ですか?」

「白埜さんだから、渡したのかもしれないってことです。秘書が鳥を苦手としていることくらい知っていてもおかしくない。それをわざわざ買ってきたり、社長室に飾ったりしますか?私だったら、もっと個人的なスペースに飾りますが」

 まさかそんなことはないと目を背けていたのに、桃園社長に言われたらやけにリアルで戸惑う。


「ほら、早く食べないと。ここの肉は新鮮で、焼き方も最高ですから」

 





 自宅の前まで送ってもらい、到着したのは23時前。


「とっても美味しかったです。ご馳走になってばかりですみません」

「いいんですよ。社長はこういうことくらいしかできませんから」

「ご謙遜が下手ですよ」

 ちょっと失礼な冗談も言える関係になった。友達でもなく、恋人というには遠く、仕事関係のカテゴリに入れれば飛び出そうな曖昧さが、私にはちょうどいい。


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