溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「話すならどうぞ」
「いえ、後でかけ直しますので」
桃園社長からの着信は不在通知に切り替わった。
「白埜さんに1つ頼みたいことがあるので聞いてもらえますか?」
「はい」
「秘書の1人が、専務の海外出張に同行するのですが」
「ええ」
「帰ってくるまでの1ヶ月で構いませんので、代わりに世話をしてほしいんです。1日1回で構いません」
「……ペットを飼っていらっしゃるんですか?」
「まぁ、そんなところかな」
世話をするということは、秘書以外は知らない場所にある自宅の鍵を持たされるのだろうか。
それに、ペットを飼ったことはないから、役に立つのか自信はない。
「一時でも、命を預かるということになるので、経験の無いことは出来かねるのですが、よろしいのでしょうか……」
頼まれごとは受けるわけにいかないと遠回しに断りを入れると、すかさず社長が優しく微笑んだ。
「難しくはありません。そこの書斎に置いてある椎茸に、霧吹きで水を掛けてほしいだけですから」