溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「この椎茸、育ったらどうしてるんですか?」
「勿論、ありがたく食べますよ」
それ以外に選択肢はないけれど、例えば家畜を食す微妙な気持ちになるほどではないようだ。
「――はい、葛城です。お世話になっております。社長はお元気ですか?いつも気にかけてくださるので光栄です。…………ええ、それで構いません。どうぞよろしくお伝えください」
電話をかけてきた相手も、世間でクールでミステリアスと言われている社長が、椎茸を育てているなんて思いもしないんだろうな……社内でも秘書だけが知る秘密だったんだし。
やっぱり、つかみどころがないと言うのか、なんというのか……。
「さて。そろそろ仕事に戻るから、白埜さんも」
「はい。では、明日からも仕事の合間にお邪魔いたします」
「よろしく頼みますね」
書斎の反対側に設けられているウォークインクローゼットからは、収納されている折りたたみ自転車やゴルフバッグが見え、社長が奥のほうから靴を出してきた。