溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「1つ教えていただきたいのですが」
「そういえば今日は指輪をしているんですね」
「社の誰にも見られない時間くらいは、せっかくなので着けようと思いまして」
「……そうですか」
私の問いかけをあえて無視しているような態度に違和感を感じつつ、社長室を出ずに待っている私を社長が見つめている。
「椎茸の世話をどうして私にお任せくださったのですか?他の方でもできることと思うのですが」
「白埜さんのことが、好きだからですよ」
ドアに背を向けていた私の前に、綺麗に磨かれた靴の音を1つずつ鳴らして、社長が立ち塞がった。
「それ以外に理由なんてあるはずがないでしょう」
いつも以上に近い距離に、息が詰まる。
「フラッグ出版の横野さんに写真の差し替えをしないように言ったのも、貴女に置物を渡したのも、この部屋に呼ぶ口実を作ったのも、すべて」
熱っぽい視線でじっと見つめられると、社長が言ったことに真実味が増す。