溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「……公私混同するつもりはありません」
「桃園社長とプライベートで会ってるのは、俺から見れば公私混同だよ」
予想外の連続に鼓動が主張して、聞こえてしまうのではないかと思うほど鳴り響く。
「そんなに俺が嫌いですか?」
「好き嫌いで考えたことはありませんので」
さらに詰められた社長との空間に、知らなかったほのかな香り。間近で合わせられる視線から逃げられなくなった。
「それなら、今から考えてください」
躊躇なく伸びてきた彼の右腕がドアを突く。
トン、と押され、追い出された背中が妙に寂しい。
社長が、私を好き?
いつから?
どうして私を?
何周もする疑問の答えは、今のところは1つも分からない。
それに、社長とつき合ったら仕事がしにくくなると分かっているから、鳥さんの一件だってあんなに気を張っていたのだ。
だけど、社長を意識していなかったせいで、熱くなった耳や頬の温度に戸惑ってしまう。
ぼんやりとした頭でエレベーターで階下へ降り、なるべく人目に触れないように気をつけて広報部に向かった。