溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


 社長に言ったとおり、特別好いているかどうかなんて考えたこともなかった。


 あくまでも社長として、接していてくれたから。
 社交的で誰にでも分け隔てなく接してくれるし、近しい社員を下の名前で呼ぶのも、仕事という前提があったから成り立っていたのだ。


 それが、葛城亜緒という1人の男性として目の前に立たれると、今までの何もかもが狂ってしまう。



 初めて社長を見たのは、就活の説明会だったと思い返す。
 起業して自ら広告塔になっていた社長は、社の未来像といかに楽しく充実した仕事をやれるか、とても熱心に話していた。
 一緒に働いてみたいって、そう思ったから選んだだけで、特別な関係は望んでいなかった。


 この5年間で1度もこんなことはなかったはずなのに、意識させられるには十分な出来事が積もる。


 反則だと思った。

 あんな距離で熱を浴びせられて、知らなかった想いを告げられたら……心臓が忙しなく動いてしまう。



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