溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「このことは、社内で公にしたくないのですが」
「もちろんです」
同期よりも先に、先輩が約束を結ぶ返事をした。
「指輪は、フラッグ出版の桃園社長からいただいたものです。葛城社長は何も関係ありません。その記事にある時は、偶然社長とすれ違ったので話しただけです」
桃園社長からもらったものなのかと、社長が食い下がってきたことは言えない。
まさか、ついさっき告白されたことも、椎茸のお世話係を命じられていることも。
「分かりました。事実ではないと報告しておきます。あとは社長にも確認して対応を決めますから」
先輩から解放されて、肩の力が抜けた私を乃利子たちが囲む。
「桃園社長とつき合ってるってこと?結婚するの?」
「まだちゃんと返事はしてないけど、おつき合いすると思う。結婚はまだ……話が出てないから」
あの大社長と交際していると知った彼女たちの顔は、しばらく忘れられないだろう。
驚きに満ちたあと、羨ましそうにしたんだ。
本当に心から祝福してくれているかは、今のところまだ分からない。
こんなことになるなら、日頃から彼女たちのゴシップ好きに多少なりとも合わせておくんだった。