溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「あれから、会社の前に怪しい人影はない?」
「ゴシップ記事の撮影をする人がどんな人なのか見分けはつかないけれど、広報に原稿が届いていないので平和なんだと思います」
「そう。それならよかった。でも、まだ世間には葛城社長の相手は社内にいて、社員の中にも千夏さんとの関係を疑っている人だっているかもしれないね」
「社内は大丈夫だと思いますよ?」
「どうかな。人間は自分のためならいくらでも他人を陥れる考えを持っているから」
「怖いですね、そう思うと。でも、きっと社内では私と桃園社長の関係が知れ渡っていますし、心配はないはずですよ」
ナイフを置いて、ワインに口をつけた彼が私を射抜く。
「私といたら、きっと疑いなんてそのうち晴れる。だからもっと頼ってほしいんだ。千夏さんを守るのは、葛城社長ではなくて、私だから」
「……はい」
時々、桃園社長は諭すように想いを語るようになった。
心が束縛されているようで、少しだけ窮屈に感じることが増えてきた。
まだお互いを知る過程にいるし、大切に想われているからだろうと理解を示そうとは思う。
だけど、やっぱり重くのしかかってくる。