【短編】先輩とのクリスマス
先輩とのクリスマス

12月25日、午後6時。

この学校は必ず毎年この日、この時間にクリスマスツリーを飾る。

輝くイルミネーションに目を輝かせて俺の隣に立っている先輩。

俺の好きな人。


「すごく綺麗だね」

「はあ、そんなもんっすかね」


このクリスマスツリーにはあるジンクスがある。


『クリスマスツリーの前で手を繋いだ男女は必ず結ばれる』


というかなり有名なものだ。

このジンクスがここまで有名になったのは、このおかげで恋人同士になった人、結婚した人まで出てきたからだ。

その中には学校の教員も含まれており、かなり有力な説として有名になった。

おかげで周りには大勢の男と女。

冷やかしで男同士で来ている奴もいるが、お前らがくっ付いたらどうすんだよ……。と心配する。


先輩は3年生。
もうすぐ卒業してしまう。


今まで幾度か告白しようと試みたがタイミングが悪いのか全て上手くいかない。

ついにはジンクス頼みということだ。

ツリーに夢中になっている先輩を見る。

やっぱり好きだと思う。

いつからこんな恋愛脳になってしまったのか。


意を決して口を開く。


「先輩、手、繋ぎましょう」


『繋ぎませんか?』と言う予定だったのに緊張で頭が真っ白になってしまった。

繋ぎましょうって、なんで断定なんだよ!

自分の中でツッコミをいれる。

まあこの中でムードも何もないのだが……。


「なんで断定なの?」


先輩が笑いながら俺が考えてたことと同じことを口にする。

笑うと八重歯が見える先輩。


「ねえ知ってるんでしょ?桑原くん」


俺をじっと見つめて言う先輩。

知ってるでしょ……ってそりゃあ、それ目当てでここに来たのだ。


「……これ目当てです」


俺が言うと先輩は桑原くんもやるなー、と笑った。

先輩の口から白い息が出る。

少し鼻が赤い。



「はい、どうぞ」



と手を差し出す先輩。

俺の手より小さくて白いその手を取る。
冷たい。


「先輩冷たっ」


つい声に出す。
先輩はそうでしょ、と言って笑う。


「私もね」


先輩は少し俯いて言う。


「私もね、ずっとこうしたかったんだ」
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