大悪魔さんのターゲット。
朝山side

「俺ね、婚約者がいたんだ。」

「‥‥うん」

知ってるから驚きもなにもしなかった。やっぱりあのホストの時私だってばれてなかったんだ‥‥

「隠し事なしって言った癖にね。後で朝山さんも殴っていいよ。」

「な、殴りませんよ!私」

「まぁ、朝山さんが暴力ふるとこなんて想像もできないけどね。俺、最近殴られちゃったその理由が婚約の話なんだ‥‥」

「そ、そうなんですか‥‥」

「聞いてくれる?」と三上くんは言った。私は頷くことしか出来なかった。今聞かなくちゃ今度なんて絶対聞けない気がした。

「俺、今でもずっと初恋の子が好きなんだ。でも、その子の名前ずっと思い出せなくてね。好きなのに思い出せないとか変な話なんだけどさ‥‥。でも、この間やっと名前を思い出せたんだよ。」

そう言って彼は少し微笑んだ。その彼の笑顔を見れるまであと少ししか時間はないんだよね‥‥

「それもこれもあのお姉さんのおかげなんだ。」

「お姉さん?」

「うん。ホストに来てくれたとっても綺麗な人でね、思わず俺の初恋の人かもなんて思っちゃったんだ。でもその人のお陰で俺は婚約者との求婚を断ってきた。」

「えっ‥‥こ、断ったんですか?」

それには驚いた。まさか本当に断ってしまうなんて‥‥

「そしたら俺の頬を思いっきり殴ってというか、叩いてというか、物凄い勢いでされてね、この有様ってわけ。」

そう言うと彼は笑い話のようにして語り終えた。

「あの、じゃあやっぱり三上くんは初恋の人に告白するんですか?」

私の心は物凄くドキドキしていた。

同時に悲しみもあった。

三上くんの事が好きで、誰にも取られたくなくて、ずっとあなたの隣にいたいと思ってる。

けど、三上くんのこと好きなら彼の幸せを応援するのが基本だよね。

‥‥笑わなきゃ。普通でいなきゃ。

「そうだなー、俺はやっと初恋の相手を思い出したからね‥‥告白するよ。その前に朝山さんにはあれをしなきゃね。ちょっと待ってて」

そう言って三上くんは部屋を出ていく。私になにをするつもりなんだろう‥‥。でも、今なら彼に何をされても嫌じゃないと思うだろう。

いつもなら意地悪されると苛立ったり、新種のイジメかと思ったりするけど

きっと今ならなんでも受け入れられる気がした。
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