呆れるほどに不器用な恋を、貴方と。
急に引き寄せられた腕。
体を包むぬくもりに思わずあげた顔には既に別のぬくもりが重なっていて。
「……んっ、」
思わず漏れた濡れた吐息に顔が赤くなる。
「━━━━━……煽んないで、」
角度を変えて重なる唇の合間に理不尽な声。
煽った覚えなんてないから!
抱き締める為に体に回った腕がするすると頭に登って、逃げられないように後頭部をガッチリ支えられる。
「んんっ、…………はっ、ん、」
荒々しく塞がれた唇。
少し硬めの薄い唇が私の唇に沈むように重なる。
苦しくて、でも蕩けるように気持ちよくて。
唇の隙間から捩り込まされた分厚い舌が歯列をなぞるようにねっとりと動き回っていたかと思ったら、私の舌に絡み付いて吸い上げた。
身体中の力が抜けて、玄関とワンルームの部屋を繋ぐ小さなスペースに座り込んでしまった。
崩れる体を追いかけてキスは続く。
「んっ、………………やっあぁぁ、」
「だから、煽りすぎ…………」
もう頭で考える余裕なんてとうに無くなって。
ただただ桜木さんから与えられる熱に浮かされていった。
もっと、もっと、と逆上せた頭でねだるように桜木さんの首に手を回す。
それを待っていたかのように体が宙に浮く。
突然の浮遊感にビクリとして体を離そうと力を入れるが、余所見をするなと言わんばかりに後頭部に回っていた腕に力が入り身動きがとれない。
それでも、と身じろぎしてしまう私に「暴れると落ちるよ」なんてニヤリと笑ったかと思うと再び唇を塞がれた。