呆れるほどに不器用な恋を、貴方と。
あっ、いた。
いつもの店の、いつもの席。
急いでいたのか、疲れたようにカウンターに肘をついてぼんやりしていた。
ニヤニヤしていて欲しかったわけでも、
ソワソワしていて欲しかったわけでも、ない。
だったらどんな態度が正解か、なんてこんな経験したこと無いから分からないけれど、少しだけ、ほんの少しだけ、ツキリと胸が痛んだ。
後悔、してるのだろうか。
流された?
圧倒的に言葉が足りないまま進んだこの状況の中、思い付くのは後ろ向きな事。
声を掛けるのを躊躇っていたその時、ふいに桜木さんと目があった。
咄嗟に出た笑顔は職業病と言うべきか。
けれど、それに応えて桜木さんもほっとした笑顔を見せてくれた。
考えすぎ、だよね。
だって、笑ってくれた。
もしかしたら、桜木さんも不安だったのかもしれないし。
なんて、おめでたすぎる考えかしら。
でも、笑ってくれたんだ。
良かった。