呆れるほどに不器用な恋を、貴方と。

それから、私の忙しい毎日は変わらずで。
度々会うコーヒーショップで視線が合うと会釈する仲になった。

店に入る前に少しだけ前髪を気にしてみたり。
服装は……子供達の相手をしなければいけない事から変えることは出来なかったけれど、可愛いスニーカーに変えた。
ささやかすぎる……。

1ヶ月ほどたって、運動会も終わり少しだけ落ち着いた日々が戻った。
頭には、まだ名前も知らない彼のこと。

お礼を、してみようか……。
ご飯でも、なんていきなり誘っても迷惑だろうから気持ち程度のプレゼントを渡してみようか。

いつも見る彼は、見るからに清潔間溢れるピシッとしたスーツを身に纏い、腕にかけられた時計もいかにも高級品のようで、その仕立ての良いスーツによく似合っていた。

少し長めの髪をきちんと後ろに流すように固めて、黒ではない、濃紺?の混ざった太めの縁の眼鏡からみえる切れ長の瞳。

にきびなんて出来たことの無さそうな綺麗な肌のお手入れ方法は、本当に教えてほしくなる。

初めて交わした会話のときに聞いた声は、いつまでも聞いていたくなるほどに私の耳に響いた。

声まで素敵だなんて。

モテるだろうな、この人。

小物……は趣味があるだろうから、消耗品のようなお菓子とか。
手作り、は知らない人からもらうには遠慮したいものだよね。

ちょっとだけお高めな、有名店の一口サイズのチョコレート。
いつもブラックを飲んでいる彼には甘すぎないビターなものを。

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