呆れるほどに不器用な恋を、貴方と。
あぁぁぁぁぁ、そうだった菜摘様がいた。
ドアに手をかけてまさに出ていく瞬間、なっちゃんの声で立ち止まる。
「央?何してるのかしら?」
「は、はい!」
「いつまでいじけてるの?」
「いじけてなんか……」
「じゃあ、行くわよね?」
「………………はい」
足を組んでコーヒーを啜りながらこちらを見ずに話を続ける菜摘様。
何故かなっちゃんに呼ばれると逆らえない。
私だけかと思ったら、旦那様である龍磨君もそうだと言っていたし、なっちゃんに関わる人には普通の事なんだと二人で納得したものだ。
「央、ごめん。行こう?」
今度こそ、と手を出されるがその手に触れることが出来ずに戸惑っていると強引に腕を捕まれて手を握らされた。
「っ、な、!!」
「あーもう、煩い!行くぞ」
引きずられるように店の外に連れ出された。振り返っていたなっちゃんを見るとヤレヤレ、と言わんばかりに苦笑して手を振っている。
軽く頷いておいた。
ありがとう、なっちゃん。