花火
雨が降ってきた。


彼は、わたしが濡れないように傘を買ってくれた。


でも、一本だけしか買えなくて・・・彼は濡れっぱなしだった。


―――いっしょに、はいろうよ。


わたしはそう誘った。


「・・・・・・」


彼は困ったように頭をかく。


「・・・相合傘なんて、はずかしい」


―――でも、ぬれちゃうよ?


「・・・べつにいい」


ぶっきらぼうに歩こうとする。


―――だめだよっ。


わたしは腕をのばして、彼の方に傘を傾けた。


「・・・ありがとう」


ぼそっと、お礼を言うのが聞こえた。


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