花火
わたしたちは崖を登る。


2メートルくらいの崖。


猫さんは、軽々と行ってしまう。


次に、彼が上によじ登る。


最後にわたしが、彼の手に引かれて登る。


「・・・おもいぞ」


登りきった後、彼が汗をぬぐいながら言う。


―――おもくないもん。


「おもいっば」


―――おもくないもんっ。


わたしは、彼にそっぽむく。


しつれいなんだもん。


そのまま、背をむけてあるきだす。


「ごめん・・・」


背中から、彼が謝るのが聞こえた。


「ちょっと、からかいすぎたよ・・・ごめん」


もう一度謝ってくる。


もう、本当は許しているけど。


―――ダメ、ゆるしてあげないっ!


わたしはもうちょっとだけ、怒ったフリをしていた。




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