王子、月が綺麗ですね
凛音の肩を引き寄せ、耳元で囁いた。

「よいな」

凛音は「はい」と素直に答え「葵くんも言葉が堅いですよ」と、付け加えた。

夕飯を済ませ部屋に戻ると、紅蓮が「湯に浸かられるなら、ご一緒しますよ」と言ってきた。

「夕飯前に頂いたのであろう?」

「良い湯でしたよ、お1人ではもったいのうございます」

「紅蓮、其方には気を遣わせておるな」

「参りましょうか」

紅蓮と露天風呂に向かうと、既に凛音と叔母上、それに祥が入っていた。

祥は女性陣に遠慮し、風呂の隅で大きな体を丸め、小さくなっていた。

「何だい、あんたたちも来たのかい」

凛音は兎も角、叔母上までいるとは思わなかった。

「炭酸泉だからね、肌にいいのさ」

「炭酸泉? 先ほど女将にもらった白湯にはラジウムが含まれていると」
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