王子、月が綺麗ですね
「龍頭泉かい? 噴き出し口が違うし、湯量が違うのさ」

叔母上は恥じらいもなく湯に浸かり、こちらをみている。

祥は紅蓮と俺を確認するなり、温泉の隅っこから中央に移動した。

「凛音、あたしたちはそろそろ上がろうかね。男子は男子同士、積もる話もあるだろうからね」

叔母上は慌てる凛音にはお構いなしで、そそくさと露天風呂から上がった。

凛音はタオルを駆使して、叔母上の後を追いかけた。

華奢なわりには、しっかり女性らしい凛音の白い肌に、俺の心臓は早鐘を打ち、凛音を正視できなかった。

松葉杖を垣根に立てかけ、紅蓮の手を借り湯船に浸かる。

祥は俺の体をじっと見つめ「細いな」と、腕の太さを見比べる。

「俺の半分もないじゃん」

祥に言われて、祥の隣で腕を並べてみると、確かに俺の腕は祥の半分もない。
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