王子、月が綺麗ですね
「諜報部員の面が割れては使い物にならぬ」

「あんたって、イメージ違うんだな。おっとりして何にも知らない、大人しいヤツかと思っていた」

「そう思っているのは其方だけではあるまい」

「祥くんは知らないでしょうけど、お……葵くんはすごく聡明で、両陛下や騎士団、王宮の人たちからも信頼されていて、王都でも人気があるんだから」

わたしは王子が悔しがっている様子を見て、ムキになって言った。

「此処に来るまでずっと、年齢問わず誰もが、あんたを振り返っていくし、あんたの言動には驚かされてばかりだからな」

「確かに。葵、あんたは何かにつけて目立つというか、華があるよ」

王子のオーラは隠そうとしても隠せないことを王子自身は、きっと自覚していないのかもしれないと思った。

朱雀の社が近づくにつれ、わたしたちの緊張感はしだいに増していった。
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