王子、月が綺麗ですね
15 凛音side 陰陽師
「何なんだ、アイツは」
夕刻、花琳の宿に着くと、紅蓮殿は手続きもそこそこに急いで王子を部屋に案内させた。
祥はロビーでひと息つき、眉を吊り上げ愚痴を零した。
「訳のわからない呪文を唱えたり、印を結んだり、いきなり炎の中に手を突っ込んだり、自分の足も自由にならないくせに人の身体を癒やしたり」
「それが葵くんなんです」
「何もなかったからいいようなものの、下手したら火傷だけでは済まなかったんだろ」
「心配いらないよ。あの子はちゃんと訓練しているんだ。そんなヘマはしないさ」
「そういうことを言ってんじゃねえ。説明もなしにいきなり行動すんなってことだ。やることなすこと一々、こっちの肝が冷えるんだよ」
「それは無理だろうよ。何もかも話す子ではないからね。深刻なことほど話さない子だ、そうだろ凛音」
「はい……」
夕刻、花琳の宿に着くと、紅蓮殿は手続きもそこそこに急いで王子を部屋に案内させた。
祥はロビーでひと息つき、眉を吊り上げ愚痴を零した。
「訳のわからない呪文を唱えたり、印を結んだり、いきなり炎の中に手を突っ込んだり、自分の足も自由にならないくせに人の身体を癒やしたり」
「それが葵くんなんです」
「何もなかったからいいようなものの、下手したら火傷だけでは済まなかったんだろ」
「心配いらないよ。あの子はちゃんと訓練しているんだ。そんなヘマはしないさ」
「そういうことを言ってんじゃねえ。説明もなしにいきなり行動すんなってことだ。やることなすこと一々、こっちの肝が冷えるんだよ」
「それは無理だろうよ。何もかも話す子ではないからね。深刻なことほど話さない子だ、そうだろ凛音」
「はい……」