王子、月が綺麗ですね
紅蓮は俺を素早く背負って、救護室に急いで駆け込んだ。

ハーン殿は紅蓮に背負われた俺を見るなり「試合の途中でスタミナ切れにならなくてようございましたな」と、目を細めた。

俺を直ぐさまベッドの上に寝かせ、体のあちらこちらを撫で回すように、念入りに触診する。

「体が内からもかなり火照っておられませぬか、熱も高うございますな」

俺の額に当てられたハーン殿の手が冷んやりとし、心地よく感じられた。

「朝からずっと身体が火照って熱い。試合後はさらに熱くなって……身体中が痛む」

俺がポツリ零すと、凛音が「あっ」と声を漏らした。

「そんな状態でよく祥に勝利なさいましたね、王子は負けず嫌いですもんね」

紅蓮がからかい半分に言う。

「あと数分、試合が長引いておれば危うかった」

紅蓮は口笛を鳴らした。
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