王子、月が綺麗ですね
「──観覧席に戻らねばならぬ。痛み止めでも栄養剤でも、速やかに投与せよ。歩けぬとあらば、杖を用意せよ」
我ながら、これほどまでに癇癪持ちだったのかと思うほど、苛立っていた。
自ら招いた結果ではないかと自分自身に言い聞かせるが、苛立ちは収まらない。
「王子、両陛下には何と申し開きなさるのです?」
凛音が俺の顔色を窺い、覗き込んだ。
「如何様にも理由はあろう。急ぎ戻ろうとして階段を踏み外し、骨折したとでもお伝えすれば良いではないか」
俺が言い終わらないうちに、紅蓮がいきなり笑い出した。
「いや、王子は嘘がお好きだなと思いまして」
申し訳なさげに、手を合わせる。
「秘薬を使ったなど、言える訳がなかろう。母上はお嘆きになり、泣き乱れられる」
俺を見つめる紅蓮から、目を反らす。
「あの気丈な女王陛下がですかな? あり得ませぬな」
我ながら、これほどまでに癇癪持ちだったのかと思うほど、苛立っていた。
自ら招いた結果ではないかと自分自身に言い聞かせるが、苛立ちは収まらない。
「王子、両陛下には何と申し開きなさるのです?」
凛音が俺の顔色を窺い、覗き込んだ。
「如何様にも理由はあろう。急ぎ戻ろうとして階段を踏み外し、骨折したとでもお伝えすれば良いではないか」
俺が言い終わらないうちに、紅蓮がいきなり笑い出した。
「いや、王子は嘘がお好きだなと思いまして」
申し訳なさげに、手を合わせる。
「秘薬を使ったなど、言える訳がなかろう。母上はお嘆きになり、泣き乱れられる」
俺を見つめる紅蓮から、目を反らす。
「あの気丈な女王陛下がですかな? あり得ませぬな」