王子、月が綺麗ですね
「ハーン殿もそう思われます? ですよね。女王陛下には……メデューサという異名があられるくらいだから」

なるほどなと思う反面、メデューサの姿を思い浮かべると怒りがこみ上げ、声を荒らげた。

「母上を愚弄しておるのか」

「王子、違いますよ。それほど気丈で威厳があられるということですよ」

凛音に宥められ、怒りを静める。

「真の龍神を身に宿し、精神の均衡を保つには余程のご覚悟が必要でしたのでしょうな」

「真の龍神とはどういう意味だ」

「龍神は本来、陰の気を持つ黒龍と陽の気を持つ白龍とが合わさって成る、黄龍という1体の龍神にございます。女王は黄龍の強い気を統べるために、陰陽の勾玉を常に身に着けておいででした」

「では……龍神は今、黒龍と白龍に身を分かち、母上の内にあるのは黒龍のみと」

「さよう」

「──面妖な……」
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