王子、月が綺麗ですね
王子は足に目を落とし、ゆっくり擦り更に続けた。
「其方にとってはたかが奉納試合だが、余1人のために国の評価が下がるなど耐えられぬ。それに闘神祭は諸外国にも案内を出し、王女の婿候補を募っておる。試合中は元より、この先は誰が訪れ、何を企んでくるか、何が起こるかも判らぬ。余が奉納試合を棄権したり、或いは試合に負けておれば、国を危険に晒すことにもなりかねなかった」
「それでは王子が」
「寝たきりになっていても、命を落としていてもおかしくない秘薬を使ったのは承知しておる。この程度で済んだのは、余にはまだ成すべきことがある証だ。それに余は治癒を諦めてはおらぬ」
王子は祥の呆れた表情を覗きこみ、微かに口角を上げた。
わたしは王子の志に、ただ涙を堪えるのが精一杯だった。
「莫迦、泣くな」
王子はわたしの頭を胸に抱き寄せ、呟いた。
「其方にとってはたかが奉納試合だが、余1人のために国の評価が下がるなど耐えられぬ。それに闘神祭は諸外国にも案内を出し、王女の婿候補を募っておる。試合中は元より、この先は誰が訪れ、何を企んでくるか、何が起こるかも判らぬ。余が奉納試合を棄権したり、或いは試合に負けておれば、国を危険に晒すことにもなりかねなかった」
「それでは王子が」
「寝たきりになっていても、命を落としていてもおかしくない秘薬を使ったのは承知しておる。この程度で済んだのは、余にはまだ成すべきことがある証だ。それに余は治癒を諦めてはおらぬ」
王子は祥の呆れた表情を覗きこみ、微かに口角を上げた。
わたしは王子の志に、ただ涙を堪えるのが精一杯だった。
「莫迦、泣くな」
王子はわたしの頭を胸に抱き寄せ、呟いた。