誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「っていうか、前から言ってることだけど、いつまで秋葉のことサン付けで呼ぶ気~?昔からの知り合いなんだから、いい加減親しみ込めた呼び方してもいいんじゃない?何、気ィ遣ってんの?龍河のクセに」
「俺様だから気を遣ってんだよ。たしかに俺は何度か秋葉さんに会ってるし口もきいたことがある。ただな、秋葉さんは、姉ちゃんだけでなく俺にとっても特別な存在なんだよ。気心知れてるからって、呼び捨てにしていい女子高生じゃない」
いつも冗談であいなをからかう時のようにひょうひょうとした物言いをする龍河である。学校では同性の友達も何人かいて彼らと楽しく交流しているみたいだが、家では淡々としゃべる察しのいい十五歳男子。
あいなは、弟の頭の良さや洞察力の高さにたびたび驚かされる一方、何度も顔を合わせている秋葉に対してかしこまった言動をとる彼のことを理解できずにいた。龍河にとって、秋葉の方が三つ年上とはいえ、かしこまりすぎだと思う。
ただそれだけのことならあいなもこうして口を出したりしないのだが、時々学校で、秋葉がそのことを気にしているから、気にとめざるをえないのだ。
『龍河君ってさー、何で私に敬語使うんだろ?私達は何度か会ってるし、私にとっても龍河君は弟みたいなものだから、あいなに接するみたいに気軽にしてくれればいいのに。私、何か嫌われることしたかなー?』
親友にそんなことを言われたら、あいなも大人しくはしていられない。
秋葉の憂いを晴らすべく、あいなは改めて龍河を諭した。
「龍河が秋葉のこと大切に考えてくれてるのは、私も嬉しいよ。でも、秋葉本人は、もっとはっちゃけた感じで龍河と仲良く話したいみたいだよ。変に気を遣わず、もっと仲良くしたいんじゃないかなー?」