誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「仲ならもう良いじゃん。秋葉さんと俺、ラインとかメアドも交換してるし」
「現代っコ的返しだな、ううむ……」
「姉ちゃんもバリバリ現代っコだろ。秋葉さんは俺にとって親愛なる家族の親友なんだから、敬意を持ちながら接するのは当たり前でしょ?」
当然のことを今さら言わせないで、と言うように、龍河は片手をひらひらさせた。
「親愛なる家族の親友、ねー……。龍河がそういうこと言うと、限りなくウソくさいんだよねー……」
「冗談のフリして本音を言う時もある。姉ちゃんとしては秋葉さんの意見を優先させたいんだろうけど、俺の意思もちょっとは尊重してよね。だいたい、姉ちゃんはつまんないこと気にしすぎ。別にどうってことないことじゃん。こんなことで仲が悪くなるほど、秋葉さんと姉ちゃんの関係は浅くないでしょ」
「それはそうだけど……。でもさぁ」
「はいはい。この話は終わり。それよりも、姉ちゃんは次の恋を成功させる特訓でもしたら?試しに乙(おと)ゲー(乙女ゲームの略)やって、男の心理を読むコツをつかむとかさ」
「乙ゲーか。ちょっと興味あるけど、あんなの、選択肢次第でどうにでもなるじゃん。リアル男子をオトすには役立たないと思う」
「まあ、あれは一種の娯楽ゲームだからな。分かってんなら、秋葉さんの勧めてくれた恋愛マニュアル、少しでも頭に叩き込んだら?そしたら、ちょっとはマシな感じに進行するんじゃない、姉ちゃんの恋もさ」
「うう……。イタイとこを突くなぁ。反抗期か、君は」
「まあ、十五歳だしね。一般的には第二次成長期の訪れによる反抗期まっさかりな年齢だな」
延々続きそうなボケツッコミトークを適当な所で切り上げると、スマホ版ソーシャルゲームのブラウザ画面を終了させ、あいなは自室に引っ込んだ。