誤り婚−こんなはずじゃなかった!−

「恋愛マニュアルかー。これ読んで特訓するかー」

 机の上や床。乱雑に広がった数冊のマニュアル本を拾い上げ、あいなはベッドに寝転んだ。
 秋葉のアドバイスを受けながら購入した本や雑誌の数々。

「一応、読んではいるんだけどね~」

 一行、二行……。三行目に目を通す頃には眠くなってくる。

「ん~……。ダメだ。もう限界」

 そんなに疲れることをした覚えはない。まさか、ソーシャルゲームのプレイによって目の疲れがたまっているとでも言うのだろうか。

 マニュアル本を開いたまま、夕食までの数時間、あいなはしばしの眠りについたのだった。


 何冊か、こういう本を買っている。それが精一杯の努力だった。片想い歴に早く終止符を打ちたくて。しかし、頭に残るのは本のタイトルくらいで、肝心の内容まではあいなの脳内にインプットされないのである。


「私にも、いつか幸せな恋がやって来ますように」

 そんなことを、口癖のごとく一人ごちるのがあいなの常だった。
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