誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
色々突っ込みたい気持ちをグッと抑え、あいなはひとまずルイスの説明に納得した。ルイスの方が、シャルよりは話の通じる相手だと感じたからだ。
その上で、彼女は更に質問をした。
「色々聞きたいことはありますけど……。私の意識が無くなっていたのはなぜです?こんなところ、来たくなかったのに……」
棘のあるあいなの言葉に、一瞬、悲しげに顔を曇らせたものの、ルイスは穏やかな表情で冷静に頭を下げた。
「……申し訳ございません。私の魔法で、あいな様を眠りにつかせました。シャル様のために」
「魔法で!?それ、ちょっとひどいじゃないですかっ!」
眠気も吹き飛ぶ。あいなは強く反発した。
「魔法とかそういうの、私は見たことないけど……。
……もしかして、私の家の鍵を勝手に開けてシャルが入ってきてたのも、あなたの魔法のせい!?」
「いえ、あれは……。シャル様の判断で行われたことです。度重なる失礼を……。どんな手を使ってでも、私が止めるべきでした」
「……ルイスさんも同罪じゃないですか。私のこと魔法で眠らせて、こんなところに閉じ込めて……」
「その通りでございます。返す言葉もありません。あいな様……。シャル様は……」
「出ていって下さい……。一人で考えたいので」
「分かりました。……失礼します。
何かございましたら、いつでもそちらの電話をお使い下さい。何もボタンを押さずとも、執事達につながる内線になっております……」
パタン、と、静かに扉が閉まり、ルイスの気配も消えた。