誤り婚−こんなはずじゃなかった!−

(ルイスさんはシャルの専属執事って言ってた。あの人はシャルの命令なら何だって聞く人だ。魔法を使って眠らせてまで、ルイスさんは私をここに連れてきたんだもん。シャルよりは大人な感じがしたけど、私の味方にはなってくれそうにない。シャルだって、私には拒否権なんてナイって言い切った……。
 だったら、この状況を抜け出す方法はひとつしかない!)

「嫌われればいいんだ!ルイスさんにも、シャルにも!」

 シャルが次期国王だと言っていたのを、あいなは改めて思い出す。

(王子。ってことは、ここはお城か何かの一室……?んー……。やっぱり、簡単には逃げられないなぁ。
 となれば、とりあえず、結婚式とかそういうのは参加するだけして、結婚生活が始まったら皆が嫌がるようなことをすれば……。)

「どうやって嫌われよう?」

(王子なんだから、きっとお金持ちだよね。シャルの所持金やお城のお金を使い込む?城中にある高価なものを壊してまわる?シャルはびくともしないだろうけど、ルイスさんなら怒るかも!『あんな女性をシャル様の妃にお迎えするわけにはいきません!』とかって言ってさ!)

 想像しただけで笑いが込み上げてきた。

(ルイスさんみたいに冷静な人が取り乱すシーンって、けっこうツボなんだよね。
 ためしに、この部屋の物を片っ端から壊してみよっかな。ただ壊すだけじゃ私の意思が伝わらなさそうだから、そこの壺とかテーブルを窓から落とす方が、インパクトあっていいかも!)
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