誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
さっそく、勢いに任せ、高価そうな壺を両手で抱えた。
「重っ!」
(これじゃあとても、窓まで運べないや。)
元にあった場所に壺を戻すと同時に、あいなは自分の胸が痛むのを感じた。壺に対し、どうしようもなく罪悪感が湧いてくる。
「自分の勝手な思いでバカなことしようとして、本当にごめんなさい……。この壺も、きっと、職人さんが心を込めて作った大切な品物なんだよね……。私の苛立ちをぶつけられるために生まれてきたわけじゃないんだよね」
「いや、割りたいなら割っていいぞ。それでお前の気が済むならな」
「は!?」
いつの間か、あいなの背後にはシャルが立っていた。首を振ることでブロンドの髪を払い、シャルは『なぜ割らない?』と言いたげに不思議そうな顔をしている。あいなは顔を真っ赤にし、
「ちょ!入ってくるなら、ノックくらいして下さいよ!」
「したが、反応がなかったのでな。
その壺、それなりに高価な物だが、大量生産品だ。それでお前の気が済むなら、好きなだけ割るといい。後はルイスに片付けさせる」
「そんなことできませんよ!いくら大量生産品とはいえ、そんなもったいないことしたら罰が当たります!」