誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「面白い女だな」
シャルは、鼻で笑った。あいなはそれにムッとする。
「物を無意味に壊したらもったいない……。シャルみたいなお金持ちの人には分からない感性かもしれませんね!」
「ああ、分からないな。だが、お前がそれを割ろうとした理由ならわかるぞ」
「どうだか。適当に余裕ぶっこいた発言してるだけでしょ」
ぷい、と、あいなはそっぽを向く。
(こんな男と何を話したって、無駄だ。)
シャルは意地悪な笑みを浮かべ、言った。
「余裕ぶっこいてんじゃない、余裕があるんだよ。俺を誰だと思ってる。お前の婚約者、いや、結婚相手だぞ」
「私は認めてませんけど。お金持ちのイケメン王子だから調子に乗ってるんですか?言っておきますけど、私、そういうステータスには一切興味ありません。中身のない、シャルみたいな男、合いませんから。即離婚になると思いますよ」
自分の意見を主張するにしても、さすがに言い過ぎただろうか?あいなが心の片隅でそんな風に思ってしまったのは、強気だったシャルの目が、一瞬戸惑いを見せたからだ。王子という立場上、周囲の人々からこうして強く反発されたことなどないのだろう。