誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「俺は一般人にも言い寄られる。年上からもな。だから、楽しみなんだよ。俺に興味を持たない、いや、嫌悪感を持つ女をオトす瞬間がな。せいぜい覚悟しておけ」
「覚悟って何のですかっ!!」
考えたくないと思いつつ、あいなの頭にはメディアや友人から得たあらぬ情報が高速で駆け巡っていた。
(覚悟って!覚悟って!?ひぇ~~~!!!)
「耳まで真っ赤だな」
「きゃっ!!」
耳元に、シャルの唇が近づいた。
「初夜は優しくしてやるよ」
「しょっ!?やっ、ちょ!!絶対嫌、あんたなんかに私の体は許さないんだから!」
大声で必死に抵抗するあいなに、シャルは大笑いした。
「あはははは!冗談だよ、冗談。いくら俺でも、嫌がる女を無理矢理抱く趣味はない」
「怪しい……」
あいなは涙目でシャルをにらみつける。シャルはサラッと、
「嫌がらなくさせてやるよ、時間をかけて、な」
言いたいことを言い、自信家王子は部屋を出ていった。
「~~~!!」
(王子だから、そういうことはもっと紳士的に振る舞うかと思ったのに!恥ずかしげもなく、よくもあんなことをっ!)
あいなは、悔しさ半分恥ずかしさ半分の目で、シャルの閉めた扉をにらんだ。
(結婚しても、シャルには指一本触れさせないんだから!)