誤り婚−こんなはずじゃなかった!−


 いつか、大好きになった人と幸せな恋をするため、あいなは、この強引な結婚話を白紙にすることを目指した。

(どうやったら嫌われるかなんて分からない。あのシャルが相手だし……。
 もういいや!後のことは後で考えよう!
 とにかく今は、シャルから逃げるための準備期間ということで……。まあ、何とかなるよ、きっと。)

 具体的な結婚生活が想像できないだけに、こういう時に楽観的な性格が出てしまうあいなだった。




 カスティタ城城内執務室。ここは、普段シャルがデスクワークをするための場所だった。

 あいなの部屋を後にしたシャルが執務室に戻ると、ルイスが書類整理をしているところだった。

「待たせたな、悪い」

「いえ。こちらは大丈夫です。シャル様は、あいな様の所へ?」

「ああ」

 しばしの沈黙。

 シャルの顔色をうかがうように、ルイスは静かに声をかけた。

「あいな様のご気分はそうとう悪いようですよ。どうなさるおつもりです?」

「お前こそ、怒っているのか?」

「いえ……」

 気まずい沈黙が流れる。
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