誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
(秋葉さん相手にすると緊張してくだけた言動取れないけど、電話だと顔見なくて済む分、直接会うよりは落ち着いてしゃべれるな。)
通話終了ボタンを押し、大きく息を吐く。
幼なじみで、姉の親友。とはいえ、龍河は秋葉に対してリラックスできずにいる。
(姉ちゃんは鈍感だからなー。俺の気持ちなんて全く気付いてないし。まあ、それを言うなら秋葉さんも同じだけど……。)
彼も、十五歳男性として、人知れず片想いをしているのであった。
(だからって、俺は姉ちゃんみたいにガツガツアピールする勇気はないけどね。)
日頃、冗談めかしてあいなをからかってばかりいるが、実のところ、龍河はあいなのたくましさや積極的な性格を尊敬もしていた。
(調子に乗りそうだから、絶対本人には言わねーけど。)
自分は、あいなのように片想い相手に近付くようなマネはできない。フラれて傷つくのがこわいのだ。
(相手は、ハイスペックモテ度ナンバーワンの秋葉さんだしな……。俺なんて眼中にもないだろうし。ま、別に、それでいいんだ。姉ちゃんの弟として仲良くできれば、それで……。)