誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「龍河君は、どうなの?付き合ってる子とか。
あいな、言ってたよ。今年のバレンタイン、10個以上チョコもらったんだってー?私の元カレもモテる人だったけど、さすがに10個もチョコもらったことはナイって言ってた。やるね、龍河君!」
「そんなの、全部義理チョコですって」
ひきつった笑みを見せつつ、龍河は心の中でこう叫んだ。
(姉ちゃんの口軽め!!あとでシバく!)
「中学生の女の子って、そんなにたくさん義理チョコ用意するかなー?お小遣いも限られてるだろうし。義理と見せかけた本命チョコだったりして~」
あいなと話す時のように、恋関連の話になるとテンションの上がる秋葉だった。それを見て龍河は、意外に思っていた。
(こういう話好きなの、姉ちゃんとかクラスの女子くらいだと思ってた。秋葉さんってもっとクールビューティーなイメージだったし、ちょっとビックリした。姉ちゃん相手だけじゃなく、他の人とも、こういう話、楽しそうにする人なんだな。)
微笑ましく思いつつ、龍河は言った。
「本命チョコだったとしても、俺には関係ないですよ」
「そうなの?チョコくれた女の子のこと意識し始めるってことはナイの?全く?」
「ないですね」
龍河はキッパリ言い切る。
「気持ちはありがたいです。甘いもの好きだし。でも、俺は、好きな人からモテれば、それで充分です。何とも思ってない人にモテても、嬉しくありません」