誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「へえ~。龍河君、硬派だね~。他の男にも見習ってほしいくらいだよ」
秋葉は、目を丸くして感心している。龍河的に、これは遠回しなアプローチだったのだが、彼女には全く通じていなかった。
「お話し中、失礼いたします無礼をお許し下さい」
リビングで雑談していた二人の動きをストップさせたのは、シャルの専属執事・ルイスの声だった。
「なっ、アンタどっから入ったんだよ。鍵、しめたはずだけどっ」
秋葉を後ろ手に隠し、龍河はルイスと向き合った。
「緊急事態ゆえ、このような形での訪問となりました。深くお詫び申し上げます」
城にいる時と同じく燕尾(えんび)服を身にまとった姿で、ルイスは頭を下げた。
「私は、こちらの世界とは異なる別の世界――グランツェールからやってまいりました。ロールシャイン王国次期国王・シャル=ペルヴィンカ=カスティ様の専属執事をしております、ルイス=フォクシードと申します。
本日、あいな様をシャル様のお妃様としてカスティタ城にお迎えしましたことをご報告させて頂きます」
「はぁ!?」
「ロールシャイン……!!」
龍河と秋葉、二人の声が重なる。