誤り婚−こんなはずじゃなかった!−

 一見従順そうに見えるルイスの冷静な物言いに、秋葉は苛立ちと矛盾を覚える。

「だったら、今すぐあいなを返して下さい。今日、これから私と買い物に行く約束だってしてるんですから!」

「申し訳ありませんが、それは致しかねます」

「そんなっ……」

 有無を言わせぬルイスの表情に、秋葉はひるんだ。穏やかに微笑んでいるのに、ルイスのまとう空気は冷たい感じがする。

(何、この人……。ものすごい力を感じる…!)

 ギュッと力を込めて両手を握りしめる秋葉の隣に立ち、龍河が言った。

「話はわかったよ。アンタの言うこと全部鵜呑みにしたわけじゃないけど、ここに来てアンタがそんなこと言うってことは、俺があいなの家族だからなんだろ?」

「その通りでございます。勝手ながら、あいな様のことはあらかじめ調べさせていただきました」

「ってことは、姉ちゃんはもう、ここには戻ってこないんだな」

「はい……」

 ふう、と、短いため息をつき、龍河は訊いた。

「もしかして、妃の証の指輪って、シルバーの輪っかに青い石がついたやつ?」

「ええ……!その通りです。なぜ、そのことを…!?」

 珍しく、ルイスは驚きをあらわにした。
< 38 / 83 >

この作品をシェア

pagetop