誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
一見従順そうに見えるルイスの冷静な物言いに、秋葉は苛立ちと矛盾を覚える。
「だったら、今すぐあいなを返して下さい。今日、これから私と買い物に行く約束だってしてるんですから!」
「申し訳ありませんが、それは致しかねます」
「そんなっ……」
有無を言わせぬルイスの表情に、秋葉はひるんだ。穏やかに微笑んでいるのに、ルイスのまとう空気は冷たい感じがする。
(何、この人……。ものすごい力を感じる…!)
ギュッと力を込めて両手を握りしめる秋葉の隣に立ち、龍河が言った。
「話はわかったよ。アンタの言うこと全部鵜呑みにしたわけじゃないけど、ここに来てアンタがそんなこと言うってことは、俺があいなの家族だからなんだろ?」
「その通りでございます。勝手ながら、あいな様のことはあらかじめ調べさせていただきました」
「ってことは、姉ちゃんはもう、ここには戻ってこないんだな」
「はい……」
ふう、と、短いため息をつき、龍河は訊いた。
「もしかして、妃の証の指輪って、シルバーの輪っかに青い石がついたやつ?」
「ええ……!その通りです。なぜ、そのことを…!?」
珍しく、ルイスは驚きをあらわにした。