誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「失礼します、あいな様」
「ルイスさんっ……!」
すぐさま身を起こし、あいなは窓の外を見ているフリをする。
「あいな様のお荷物をお持ちいたしました。お返しするのが遅れて、申し訳ありません」
「それ、私のスクバ!」
体に馴染んだスクールバッグをルイスの手から受け取り、あいなは勢いよくその中身を確かめた。
「あった!スマホ!」
まるで子猫にそうするかのように、あいなは両手でスマホを包みそれを頬擦りした。
その様子を微笑ましげに見つめ、ルイスは別に持っていた紙袋を彼女に差し出す。紙袋には、あいながマンガを買う時によく立ち寄る書店の名前が印刷されている。
「どうして、これを!?ここ、異世界ですよね……」
「そちらは、龍河様よりお預かりした物になります」
「龍河に会ったんですか?」
「ご挨拶をさせていただくため、昨日、私が神蔵(かみくら)邸に」
「『邸』なんて付けられるほど立派な家じゃないし、やめてくださいよ。貧乏なのが分かる家だと思いませんでした?」
「温か味の伝わってくるお住まいでした」
「……お世辞でも嬉しいです」