誤り婚−こんなはずじゃなかった!−

 自分の趣味が詰まった紙袋をルイスから受け取り、あいなは懐かしげに笑う。

「ウチ、お父さんが長年勤めてた会社をリストラされて以来貧乏で、お母さんもパートで働いてますけどおこづかいとかはもらえないから私自分でおこづかい稼いでて、弟の龍河も欲しいものとかけっこう我慢して無料で遊べるスマホゲームばっかやってるんです。ホント、どうしようもないくらいお金がないけど、お父さんとお母さんはお互いに支え合ってて仲がいいし、弟ともよく語り合ったりしてるんです。自慢の家族です」

「そうでしたか」

「すいません、よく分かんないですよね、こんな話されても……。ルイスさんにウチのこと良く言ってもらえたのが嬉しくて、つい」

「大丈夫ですよ」

「昨日からずっと誰ともしゃべってないせいか、長話しちゃいました。さっきから独り言も多くなって。恥ずかしいです」

 出会った時はピリピリしていたのに、お茶や食事の時に何度か顔を合わせていたせいか、ルイスに対して、あいなは警戒心や不快感を薄れさせていた。

 ルイスの方は、出会いの瞬間と何ら変わらず穏やかで冷静な態度を貫いていたが、あいなに接する時の彼は、日頃より柔らかい表情になっている。
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