誤り婚−こんなはずじゃなかった!−

 内心汗だくのあいなに気付いてか気付かずか、ルイスは丁寧に受け答えをする。

「…………いえ。私は、恋に時間を割けるような立場にありませんので」

「今、間がありましたよっ!!」

 相手が自分にとって不利益をもたらす人物だということも忘れ、あいなは目を輝かせた。

 ルイスが相手でもかまわない。恋の話がしたくてしたくて仕方がないのである。恋愛体質なあいならしい反応だった。

 ルイスは、その端正な顔にやや戸惑いを浮かべ、

「少し考え事をしていたものですから……」

「ホントですか!?この質問、このタイミングの『間』って、アヤシーですっ!本当はいるんじゃないですか?ス・キ・ナ・ヒ・ト!」

 浮かれ口調のあいなに、さすがのルイスもたじたじである。まっすぐ見つめていた目をあいなからそらし、

「私は、執務室に用事がありますので……」

「そうやって逃げるの、好きな人がいるって言っちゃってるのと同じですよっ!」

 調子に乗り、あいなはつっこむ。

 たとえ不本意な出会いだとしても、自分の気持ち次第で楽しく付き合えるかもしれないと、あいなはこの時思った。
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