誤り婚−こんなはずじゃなかった!−

 シャルのことを見直したものの、すぐさま態度を変えるのは難しかった。今までの仕返しとばかりに、あいなはハロルドを褒めた。

「……面白くない」

「何が?」

「他の男ばっか褒めて、お前、楽しんでないか?」

「楽しんでるけど、それが何か?」

「お前っ! くぅぅ……」

「あいな様もようやく、シャル様の扱いに慣れたようで安心しました。お茶にしましょう」

 執務室で仕事をしているはずのルイスがティーポットを乗せたワゴンを引いてあいな達の元に現れる。

 シャルはますますムッとし、

「仕事を放り出して盗み聞きか? お前もたいがいだな、ルイス……」

 と、肩を落とす。

「おや、そのような不躾な真似はしませんよ。あいな様にお茶をお出しするのも私の仕事。ちなみに、執務室での仕事はシャル様の分も合わせて全て片付けさせて頂きました。シャル様がどこぞで油を売っているものですから仕方がありません」

「悪かったよっ。たく……」
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