誤り婚−こんなはずじゃなかった!−

「んー……。あいなは前向きというか、何て言うか……」

「その外見、ちょうだ~い!」

 瞳を潤ませ、あいなは秋葉に抱きつく。陽気に前向き(?)な発言をしてはいるが、今まで一度も恋愛を成就させたことがないというコンプレックスが、彼女の中でパンパンに膨れ上がっていたのだ。

「よしよし。こんなに可愛いのにね、あいなは。男に見る目がないだけだよ。あんまり悪く考えちゃダメ」

「ふえーん!秋葉大好きー!!」

 泣き笑いするあいなの頭を撫で、励ます。これが、秋葉流の『片想いに破れた親友をなぐさめる方法』だった。

(私はいつ、あいなの笑顔を見られるんだろうね。恋するたびに泣いてばかりで、可哀想だよ……。)

 そんなことを思いながら、秋葉はあいなをハグしたのだった。


 恋は不運続きで、その記録は更新を止める気配がないけれど、友情には恵まれ充実している。
 秋葉に話を聞いてもらったおかげで、あいなの元気度は9割方回復した。

「たっだいまー!」

「姉ちゃん、おかえり。今日はバイト休み?」

「うん!」

 学校から帰ると、あいなの弟・神蔵龍河(りゅうが)が、リビングであいなを出迎えた。

 今年中学三年生になった弟・龍河は、帰宅部ゆえ、電車通学のあいなよりも先に帰宅していることが多い。彼は、スマートフォン片手に、棒状アイスを食べていた。
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